増える借金の額、鈍る感覚
増える借金の額
一万円など、20分もあればなくなります。
私はまた頭が熱くなり、冷静な、正常な判断ができなくなりました。
「四万…いや、三万借りたら四万も変わらないだろ…」
三万円も、四万円も、自分にとって完全に未知の領域です。
手元に千円以上がある日すら、ひと月の半分にも満たないような状況です。まともに考えれば返せるはずがありません。
でも、午前中にパチスロを切り上げたところで、他に行くところもありません。
「まあ、いいや、返せばいいんだから、返せば…」
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この日、限度額五万円に達することは免れましたが、帰りにドキッとする出来事がありました。
「斎藤君!」
『え…』
「斎藤君、久し振りじゃん!」
声だけでは誰だかわかりませんでした。全身の毛が逆立ち、心臓がキュッと縮まったようでした。
私がホームにしていたパチンコ屋は、パチンコ初体験をした地元の店でした。
地元なので、誰にも遭遇しないよう、必ず裏口から出入りし、帰りは駅中心部を避け迂回して帰るなど徹底していました。
誰とも会うはずがないと思っていましたが…振り向いたら、居酒屋バイトの先輩の高橋さん(仮)がいました。
「なんか、後ろ姿でなんとなくそうだと思ったよ。学校の帰り?」
私は自転車、高橋さんは徒歩。高橋さんは駅前の本屋の袋を持っていました。
「あ、はい、そうです」
パチスロでボーッとした頭をすぐ「嘘」の自分に切り替えられず、思わず笑顔が引きつります。
「お、なんかちょっと、痩せた?」
「は? いや、そんなことないですよー!」
なんかちょっと、と発せられる前に、微妙な間がありました。相手の目が一瞬、私の全身を追いかけたような間が。返答したときの表情に違和感があってのでは、と思うと、首筋に変な汗が沁み出てきました。
気になり出すと止まらず、ただの何秒の間でしたが、高橋さんが私を観察しているような気がしてきました。
「た、高橋さん、今日はなんかの帰りですか?」
相手に話す隙を与えないよう、私はすぐ相手に質問を仕返します。
「そうそう。最近専門学校に通い始めてさ。いまはちょっとバイトもしばらくやってないんだよね。」
「美容師のですか?」
「うん、そう」
それから少し、話をしましたが、私は会話を切り上げたくてしょうがありませんでした。風上に立つと全身に染み付いた煙草の臭いを嗅がれてしまうので、二人なのに妙に離れた空間で会話をしていました。
「今度またみんなで飲みましょうね」
絶対にもう会えない、と思いながらそう言いました。「絶対に、何か様子が違うと思われたはず。会ったときの違和感を、周りに言いふらされていたらどうしよう…」
しかしまた、目標に向かって一歩進めている人に会ってしまいました。高橋さんは元・引き篭もりで、大学を中退して4年間自宅から出ない期間があったと教えてくれました。
しかし、そんなことは死ぬほどどうでもいいのです。自分にとっての興味は目下、月初に迫る借金返済を乗り越えられるかどうかでした。
「やばい、また負けた…」
奇跡は起きず、借金は四万円に膨らみました。
「やばい、やばいよな、四万円、あと2週間で四万円用意しなきゃいけない、どうしよう、なんで借りてしまったんだろう、なんで今日もパチスロしてしまったんだろう、こんなことばっかりだ、勝っても負けても楽しくないのに、なんで俺はこんなパチスロしてるんだろう…ああ…」
泣きそうになり、気が狂いそうでした。もちろん泣きそうなだけで、実際には泣いていません。気も狂っていません。
どんなに後悔しても、翌日にはまたパチスロを打つのです…
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