ギャンブル依存症患者が綴るノンフィクション。

自戒の念を込めつつ、15年間に渡る「ギャンブル依存症」の悲惨な経験を赤裸々に綴ります。こんなダメ人間にはならないで下さい。毎日更新しています。

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3年間、あらゆる物事から逃げ続けた代償。

「ありがとうございました」


ペコリとお辞儀をする学生。面接官は気を良くしたのか、先ほどよりも口角が上がっているように思えました。


「森田君、どうぞ」


「はい」


応接室に通されると、予想外に、もう1人の役職者らしき男が座っていました。
白髪混じりの髪で、整髪料の臭いが強烈に漂ってきます。


男は、ほとんど話しませんでした。話しませんでしたが、たるんだ皮膚から覗く鋭い眼光で、こちらの一挙動一挙動を監視しているようでした。


父親が苦手な私は、父親と同じくらいの世代のサラリーマンが、この世で一番嫌いで苦手でした。


私の緊張のメーターが振り切れました。


「では、まずは自己PRからお願いします」


(あれ、ヤバい、頭が真っ白だ)


「……はい、私は、◯◯大学四年のも、森田と申します。大学生活では、つ、プ、プレゼンテーションに力を入れてまして、っと、それは、だ、大学3年生8月のころに……はち……いや、じゃなくて、」


静止するようにして、面接官がフォローを入れてくれました。


「ああ、緊張しなくていいよ。ごめんね、緊張させちゃったかな」


「はい、すいません、9月でした、ハハ、すいません、9月でした、あ、どうでもいいですかねそんなこと、ハハ、あの、力を、入れて、ました…………」


沈黙。(再び頭が真っ白)


「……終わりですか?」


「いえ、えっ、あの、こ、高校生が、夏休みのオープンキャンパスに来るんですが、その、学部代表として、大学の魅力を伝えておりました」


「へぇ、それはチームでやったのかな?」


「はい、10人のチームでした」


「……どういう内容のプレゼンテーションをしたの?」


「はい、それは……それは……。まず、周りの意識を集中させなければならないので、最初に映像を挟みました。こう、バーッと一気に会場が明るくなったりすると、みんな、こちらのほうを見ますよね、そういう効果を狙いました……(あとを続けようとしたものの、ド忘れ)」


「……それはあなたが考えたの?」


「はい」

(嘘。というかこの話自体、確かにとある講義を選んだ人間がたまたま集まってやっていましたが、私は「幽霊部員」。パチスロにかまけてほとんど何もしていませんでした)


「どういう映像?」


「あの、こう、キャンパスでみんなが楽しむ映像で、みんなで楽しそうに歩いたり、未来を感じさせるというか……」


「へぇ、プレゼン全体としてはどうでしたか? 工夫をこらしたところとか、過程とかも教えてもらっていいですか」


「は、はい……えっと……あ……すいません緊張して……ハハ……」

(そもそも概要を知ってる程度なのでそれ以上の言葉が出ず、笑ってごまかす)


沈黙。


「来てくれた高校生たちはどうだった? なんか言ってた?」


「いや、うちの大学に行きたいって…」


少し沈黙。面接官の口が一瞬開きましたが、閉じ、ペンを唇にあてて履歴書を見ながら、私を見ました。


「まあ、わかりました。……志望動機は、こう書いてくれてるけど、うちの会社がどういう食品を扱っているか知っているかな?」


「あ、あの、いや、あの……油とか、あ……油、とか……」


「うん、業務用食材ね。油だけじゃなくて野菜とか乾物、冷凍食品とかさ。そういうのをうちは扱っているんだ。森田君はうちの会社に入ってどういうことがしたい?」


「はい、その、地域、あ、今後、世界中で食料がふ、不足するなかで、日本の、将来的な、食料への貢献を…」


「うちは関東限定だけど、関東地域への貢献って理解でいいのかな?」


「……」


**

ボロボロでした。もう、怖くて、最後の方は手足がずっと震えて、泣きそうでした。面接官も「ヤバい奴が来たな」と思ったはず。怒り出さないだけ、優しいと思いました。


「ハリボテ」


その言葉が一番しっくりきます。あるのは表面的な、学歴だけ。中身スッカスカ。


恐らく面接官は、最初のやり取りだけで私の話が嘘だと見抜いたのでしょう。


私のコミュニケーションや調子の良さは、私が私より下だと勝手に見下している人たちにのみ機能するのみで、結局のところ、「社会人」には通用しませんでした。


「失っているのに増幅され続けた根拠なき自信」は、このとき一度、崩壊しました。


私は直前まで、「俺は大丈夫だ」と思っていました。ナメていました。自分はできると思っていました。


私は嫌なことから、苦痛なことから、逃げて逃げて、逃げ続け、3年間も逃げ続け、たまたま逃げ切れていたので、現実を知らなかっただけなのです。


「ダメ人間」。


恐怖で、自然と涙が溜まっていました。