ギャンブル依存症患者が綴るノンフィクション。

自戒の念を込めつつ、15年間に渡る「ギャンブル依存症」の悲惨な経験を赤裸々に綴ります。こんなダメ人間にはならないで下さい。毎日更新しています。

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ヨダレの様に流れ出ていく嘘八百。

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ヨダレの様に流れ出ていく嘘八百。

「ああ、いまバイトしてる広告代理店で働くことになるかも」


私は持っていたグラスを置き、答えました。グラスにはまだ一杯目のビールが三分の一残っていました。


「おお、そうなんだ!すごいね!」


佐伯は身体を仰け反るようにして反応します。右手に持ったおちょこを一度置き、すぐにまた少し口に含みました。私は、「いやいや、」と手を横に振り謙遜したニュアンスを込めて言いました。


「いやいや、いろいろ会社見たけどさぁ、結局そこにしたというか、若い人が多いから刺激があるんだよね。社長は40代だし」

「ってことはベンチャー?」

「そうだね、そんなとこだね、まあ、ベンチャーっても売上的にはわりと安定してるけどね」

ベンチャー=不安定、という固定概念をすかさず塞ぎました)

「かわいい女の子とかたくさんいそうだなぁ」

「んー、でも人数10人だからね、女の子っても2人しかいないよ。1人はもう結婚してるしね」

「場所もオシャレなとこにあるんでしょ?」

「いや、別に、まあ、原宿だけど」

「わー、すっげー、やっぱり違うんだなぁ、俺とは違う!」


我ながら、いい流れで、いい切り返しで、いい表情で、嘘をつくことができたと思いました。


防戦一方が、逆転勝利を収めたときの快感。至福の瞬間でした。


佐伯は私に認めて欲しくて人の話を聞かず、必死に自分のことばかり話していましたが、やはり上には上がいるという現実を見せつけてやらなくてはなりません。ちゃんと謙虚に、私のことも聞いていれば、最後にそんな惨めな思いをしなくて済んだのにね、と思いました。


その「広告代理店」とは、日雇いバイトで連続5日間はいった会社でした。塗装の剥がれた雑居ビル。仕事は化粧品のサンプルを配るためのアポ取り。私はずっと渡されたリストどおりに、渡されたマニュアルどおりに、電話を掛けていただけでした。


最終日、今回はじめて派遣を雇ったという社長は、私に言いました。「きみ、結構がんばってくれたね、どうだ、このままうちで働かないか? ……なんてね、アハハハハ!」


露骨な社交辞令でしたが、とても嬉しかった。


私は誰かに就活のことを聞かれたらこのエピソードをアレンジして話そうとしていました。「原宿にある広告代理店」「ベンチャー」「社長に誘われた」。


素材としては最高のものが揃っています。


私は素材を切り貼りして、脳に刷り込ませました。社長に直接、「うちに来ないか」と言われたことは、嘘の強力な根拠になりました。社長に認められたのですから、罪悪など微塵もありません。事実であり、創作などではないのです。それに社長は細かいところは明言していません。どう解釈するかはこちらの自由なのです。


「嘘を発信する」「言葉に出す」ことによって、ふわふわしていた地盤が、揺るぎないものとなりました。頭のなかは、自分は就活が成功し、終わったのだと、安心感に満ちていました