ギャンブル依存症患者が綴るノンフィクション。

自戒の念を込めつつ、15年間に渡る「ギャンブル依存症」の悲惨な経験を赤裸々に綴ります。こんなダメ人間にはならないで下さい。毎日更新しています。

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楽しいひと時、宴会の終わり。

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楽しいひと時、宴会の終わり。

時計は23時を過ぎていました。


過去の話で盛り上がり、今現在の話でも盛り上がりました。


佐伯は、「時期はまだ早いけど、」と断ったうえで、卒業旅行はサークルの企画で毎年海外に行くんだ、みんなでタイに行くかもしれない、それが楽しみだと言いました。


私は、「まだみんなで構想中だけど、」と断ったうえで、佐伯と同じで卒業旅行はサークルのみんなで沖縄に行こうと考えている、と言いました。


佐伯は、卒論の一環で、企業の人に対して統計調査のプレゼンをしなければいけない、それがとてもキツいけどいろんな人脈ができてとても面白いんだ、と言いました。


私は、卒論は個人でやるものだけど、いま現在のバイト先から実力を認められ、ベンチャー企業含めいろんな仕事を経験できてとても刺激的なんだ、と言いました。


佐伯は、大学では講義がないときはほとんどサークルの部室にこもって相変わらずくだらない話ばかりしている、と言いました。


私は、大学では講義のあるなしは関係なくほとんどパチンコ屋にこもっている……とは言わず、同じように、サークルの友達とずっと一緒だ、と言いました。


居酒屋は空席のほうが多くなりました。

肩幅の広い店員は、空いた席にアルコールを吹きかけ、雑にテーブルを拭いていました。


「あー、でも今年で大学卒業か。なんかさー、大学入る前は、第一志望に落ちたし、こんな大学で俺もうダメだわって絶望してたけど、全然そんなことなかったな」


「そうだなあ、楽しいよな。佐伯は高校のときよりいろいろ変わった気がする」


私の二杯目のビールは残り僅かになっていました。


「なんかさ、人あたりがよくなったとは言われたよ。高校の頃は、人に怯えてたというか、ほら、実際そうだったじゃん? なんか、よく言う、バリアを張ってたというか」


「ああ、それ、あったかも!」


「サークルの同期からもそれ、いまでも笑われるんだよね。孤高の人みたいだったって」


「そういうキャラも悪くはなかったけどな(笑)」


「またまた馬鹿にしてさー」


「っつーかまだ大学生活終わってないし」


お互いの笑い声が、居酒屋に響きました。肩幅の広い店員は振り返ることなく、空いたテーブルを見つけては黙々と拭いていました。


「あ、お会計お願いします!」


佐伯が手を挙げて店員を呼びます。


「いくらかな、」私は財布を取り出し、残っていたビールを飲み干しました。


私は二杯。佐伯は五杯。
私は二杯。佐伯は五杯。
飲み干したビールのグラスを置きます。
私は二杯。佐伯は五杯。


「ああ、俺たくさん飲んだから、多く払うよ」


紅潮した顔の佐伯の財布から、五千円が出てきました。


「いいよいいよ、就職祝いってことで」


私も財布から千円をいくつか取り出す、フリ、をします。


「いいって、っつーか就職祝いはお互いさまだろ!」


「いいよいいよ、割り勘で」


「いや、大丈夫」


そう言って、佐伯は五千円を出しました。私は千円だけ出しました。飲む量をセーブしてよかった、と思いました。終盤戦で佐伯を気持ちよくさせてよかった、と思いました。

想定より二千円浮いたので、この金でパチスロを打とう。そう思いました。