ギャンブル依存症患者が綴るノンフィクション。

自戒の念を込めつつ、15年間に渡る「ギャンブル依存症」の悲惨な経験を赤裸々に綴ります。こんなダメ人間にはならないで下さい。毎日更新しています。

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破産は目前、歪む人生。

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破産は目前、歪む人生。

深夜2:00。

両親が深い睡眠にはいるこの時間帯は、お金を抜くには最適でした。


4回目。もう手慣れたものです。
財布とその周りのものの位置を正確に記憶し、皮脂がつかないよう直前に石鹸で洗った手で、慎重に、財布の小銭入れを空けます。


100円玉を2枚抜き、財布についた白い糸くずの位置も正確に再現しました。

 


「これで日雇いバイトにいける…」


決して無理はしませんでした。ギリギリ、片道分の運賃さえ手に入れることができればいいのです。


昼は余りのコインで交換したロングライフパンやウィダーインゼリーを持っていきました。

てきとうな服と、底のすりへった靴。髪の毛も最低限の寝癖を直したままで、前日の洗髪が雑なことも多く、髪の毛は常にゴワついていました。


電車では一番目立たない、車両をつなぐドア付近に立ち、終始、うつむき気味に立っていました。


自動改札を抜けるときが一番緊張します。何かの間違いで料金が不足していた場合、20円もオーバーしていたら、お金を払えない……


休憩中も、極力ひとを避けていました。ひとと話すのが面倒というより、自販機などで
「森田君も買わないの?」と聞かれる恐怖のほうが勝っていました。


すいません、ちょっと腹壊してて…
すいません、実はさっき飲んだんですよ
すいません、僕はいいっす
すいません、いまあまり喉乾いてなくて


返すパターンはいろいろありますが、惨めな思いをすることには変わりはないので、だったら最大限他人から話しかけられないように努力すればいい、と考えてしまうのでした。


**

「親の財布からカネをくすねる」


結局、私は、卑しく、人として最低なこの行為さえ、「一度ラインを越えてしまった」ことにより、常習化していきました。


借金の支払いも相変わらず滞っていました。


「森田様。ご入金が確認できませんでしたが」


「あれ、すいません、先日御社からのハガキを見て、その金額をさきほど振り込んだのですが…」


「さようでございますか。弊社では確認できておりませんが、さきほどであれば、お振込データがすぐに届かない可能性もございますので、明日の確認とさせていただきます」


翌日


「森田様。ご入金が確認できませんでしたが」


「ああ、すいません、昨日振込口座を間違えていたようで、さきほどお振込しましたので…」


夜中に平然とした顔をして小銭をくすねる割に、「親に直接頼み込んでカネを貰うこと」は借金を期日どおりに返すことよりも抵抗がありました。


「母さん、違うんだ、これは違うんだ、ちょっとだけ、俺はちょっとだけ足踏みしているだけで、もう今日こそパチスロをやめてまっとうな人間になるから……」


私は幼いころから、母親には数える程しか叱られた記憶がありません。こんな姿になるとは家族の誰が想像できたでしょう。


なんとなく、私自身の終わりが近いという予感がしました。


まだ20とそこらしか歩んでいない私の人生は、破綻寸前にまで歪みが生じていました。