ギャンブル依存症患者が綴るノンフィクション。

自戒の念を込めつつ、15年間に渡る「ギャンブル依存症」の悲惨な経験を赤裸々に綴ります。こんなダメ人間にはならないで下さい。毎日更新しています。

ニュースが示唆するもの。

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ニュースが示唆するもの。

テロップに容疑者の名前と年齢が表示されました。26歳無職。私は食洗機の近くに放置された袋入りのクッキーを食べながら画面を見ていました。


「男はおおかた犯行を認めており、金に困ってやった、などと話しているということです」


画面は現場の映像に切り替わり、被害者宅のひとつと思われる白い壁の一軒家を映していました。

 


私はリモコンを手に取り、音量を少し下げました。カメラは近隣の住民だと思われる小太りの中年女性を後ろから映し、リポーターらしき男がマイクを向けていました。


「うーん、意外。びっくりしたとしか言いようがないわよ。いつもさ、元気におはようございますって挨拶して……うん、近所では好青年って評判で」

中年女性は口元に手をあてながら続けます。

「先月だったかな、近所のおじいさんを病院まで連れていくのを手伝ってたり、今日も普通に家を出てく姿を見たんだけどねぇ、なんかねー、怖いというか、どうしたんだろうねぇ」


背景などはこれから調べていくんでしょうが、近所でも好青年と評判だった容疑者にいったいなにがあったんでしょう。コメンテーターは言いました。


「さて、続いて、グルメのコーナーです」

画面は「絶品!東京で食べられる鹿児島料理の店」に切り替わりました。


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画面の中で繰り広げられる茶番を見ながら私は思いました。


「何故、この若い男はカネに困っていたのだろう? 何故、無職なのだろう?」


冷蔵庫のなかにある冷茶のポットを取り出し、底の浅いグラスにそそぎました。


何故、犯行がバレてしまったのか? 油断したのか? 誰かに監視されていたのか? 仲間はいなかったのだろうか? もっとわからないような方法はなかったのか? この男は一人暮らしだったのか、実家暮らしだったのか? 隠れるところはなかったのか?


……捕まったとき、どういう気持ちだったのだろうか?


「近隣への空き巣」という犯行が一週間にして露呈した若い男に、私は同情の思いを寄せながら、一方でこんなことも思いました。


「自分は、自宅からすぐにカネを調達できるいまの環境でなければ、たとえば今日みたいな日はどうしていただろう?」


私はおそるおそる冷茶を口に含みました。喉の周りや、歯の隙間に詰まっていたクッキーのカスが食道に流れ込んでいくのがよくわかりました。

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