ギャンブル依存症患者が綴るノンフィクション。

自戒の念を込めつつ、15年間に渡る「ギャンブル依存症」の悲惨な経験を赤裸々に綴ります。こんなダメ人間にはならないで下さい。毎日更新しています。

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終わろうとする、大学生というモラトリアム。

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終わろうとする、大学生というモラトリアム。

手伝いをする回数が増えました。
無償でなにかをすることがなくなりました。


すべてはご機嫌取りと見返りのため。
誰も知らない悪行の罪滅ぼしのため。
将来的にするであろう要求をとおしやすくするため。


「なにもせずカネだけかかる息子」

よりも、

「手伝いをするけどカネがかかる息子」

のほうがまだ救いがあると思ったからです。

 


**

紙切れを一枚噛ませたコネクタは傍目にはそうとわかりません。私は母親が仕事にいったあと、携帯電話で自宅に電話をかけ、本当に回線が遮断されたかを確認します。


「不動産に行くことにした!」


佐伯からメールがはいっていることに気付きました。夜には着信も2件ありました。

どっちの道を選ぼうがどうせ失敗だし地獄だよ。呪詛をにじませながら、私は携帯のディスプレイが「呼出中」に切り替わることを確認しました。自宅にコール音は鳴りません。


「おお、決めたんだね、いいじゃん! でも、俺は思うんだけど、世の中につらくない仕事ってないだろうし、自分のいいと思ったところにいくのが一番いいんじゃないかな」


くたばれと思いながら軽快にアドバイスともとれるメールを打ちました。「そんなことより、次回支払い遅延が発生したら、こうすればいいのか…」


さっき振り込んだんですけど。
口座番号が間違ってたかも。

に続いて、またひとつ回避手段が増えたような気がしました。


しかし…

まずいな、と私は思いました。
「佐伯のような、よくわからない大学にかよっている学生も、そろそろ就活を終えはじめている…」


私は購入したテキストを出すタイミングを攻めあぐねてました。


「公務員試験必勝(仮)」


私の人生の切り札となるであろうこの5冊の書籍(パチスロで勝ったときのカネで購入)は、大事にクローゼットにしまっていたままでした。


しかし、このプランは突拍子がないような気がしないでもありません。なにか、就職から公務員へと考えを転換させるようなきっかけが必要なのではないか? 消極的理由か、積極的理由か。選択肢は留年でいいのだろうか。

 

それとも、発想を変えて休学を選び、この重度依存状態を脱してキレイになった身で就活をやり直すとか? しかし丹念に自己分析に取り組んできた私にはその結末は5秒でわかってしまいました。休学をしたところで恐らくなにも変わらない……。

 


『さて、近年、進路が決まらなくて自ら命を絶つ学生が増加傾向にある、という統計をご存知でしょうか。我々の取材に応じてくれたのは、地元のスーパーで契約社員として働く園田君。園田君は大学を卒業して3年間、引きこもりをしていました。』


留年をすればそのあいだもいままでと変わらずに学費が掛かる。どれぐらいかかるのか具体的な金額まではわかりませんが、安い軽自動車を買えるくらいのカネは掛かるでしょう。資格試験。予備校はどうする? うちにそんな余裕はあるのだろうか。


『園田君は、この1年間に100社近くエントリーをし、50社くらい面接を受けていたことがわかりました。しかし結果は内定ゼロ。園田君にはなにかが足りなかったのでしょうか。今夜は、世界で日本だけが特殊と言われている就活について、クローズアップしていきます』


計画とはいったものの、まだ構想が甘い。失敗は許されない。失敗は自分の死を意味する。もっと親を信じさせるなにかが必要だ。俺の親は俺がどうなっていく姿を好むのだろう、もっと想像しなければならない。


相手を信用させるには、自分の弱さをみせることもときには必要だろうか?


親は、子どもが元気でいる姿を望む。幼児が手を伸ばしてガタンガタン言いながら無邪気に走らせていたそれのように、元気にレールのうえを走り、あるべき駅にたどり着くことを望む。「あるべき駅」というのは、うちの場合は大企業だ。

 

それでは親は、もし自分の子どもの心が病んでいたと知ったとき、どう考え、行動するだろう? 母親は、たとえばそれが就活が起因するものであれば、許容し、腫れものを扱うようにして「さらなるモラトリアム」をプレゼントしてくれるだろう。父親はどうだろう? 「失敗して逃げてるだけだろう、ふざけんな、俺は留年なんて許さないぞ、うちからでてけ!」と言うかもしれない。

 


『なんか…見えなくなったんですよね。自分のすべてを否定された気がして。確かに最初は有名企業ばっか狙ってました。でも、ほとんどエントリーシートで落とされてから、じゃあ別に普通に働けるところでいいじゃんって。普通にってのは、人並みに稼げて、そこそこやりがいがあって。こういうと、そんな奴がそんなに落ちるわけないだろって言われるかも知れませんが、実際、私は高望みしていたわけではなくて』


『……。』


『なんか、難しいですよね。僕にも夢がありましたよ。新幹線を設計するエンジニアになりたいって。でも、鉄道業界って人気が高くて、わりと早い段階で結果が出てしまって。そうなると、あとづけで夢とか目標を、志望動機をつくっていくわけになるわけですよね。それから、僕は自分のことがよくわからなくなってしまったんです。なにがやりたいのかな、とか、将来どんな姿になっていたいのか、とか。会社の人にもきみはなにがしたいのと突っ込まれたりして。まあ、しょうがないですし、周りはちゃんとそれを受け入れて、うまくやるわけですけど…』


『引きこもり生活ってどういうことをしていたの?』


『本当に、3年間、部屋から一歩も出ませんでした。なんだか怖くなっちゃって。50社目に落ちた瞬間、緊張と糸が一気に、こう、ピンと外れたというか、目の前が真っ暗になりました。自宅に戻って、怠さ、めまい、頭痛の症状が出て、3日くらい体調が悪くて、単純にそれが理由で部屋から出なかったんですけど。でも、それが悪かったのかも知れませんが、4日目に、ドアから一歩出ることが、いえ、ドアを開けることすら怖くなってしまったんです。なんですかね。恐怖みたいな。なんだろ。恐怖とはまた違うのかな。ドアノブに手をかければすぐに開いて、簡単に外に出られるはずなのに、自分にはそれが鉄の扉のように思えました。』


『食事とかはどうしてたの?』


『親に買ってきてもらいました。ドアのしたからメモを出して、それに買ってほしいものを書いてました。でもずっと1日1食とか2食とかで、あまり食欲はなかったです』


『心配されたでしょう』


『そうですね、いままでこういう状態なったことなかったですからね。どちらかというと活発なほうだったかも知れません、僕は。従順でしたし。1年経って、母さんに、そろそろ出てきたらって言われたとき、僕はものすごく怒ったんです。理由は僕にもよくわかりませんが、とにかく怒りました。壁を思いっきり殴って、親に言ってはいけないことも言ったりして。とおくですすり泣く声が聞こえました。いまでも後悔しています。それからは、父さんも母さんも、ゆっくり休んでいいよっていってくれました』


『元に戻ったきっかけみたいなのはあったのかな?』


『うーん、なんだろ。直接的なきっかけってのはあまりないかなぁ。親が、流行りの本を買ってくれたり、自分用のパソコンを用意してくれたり、なにかしらの手段をつかって社会と繋がっていたのもよかったのかもしれないですけど、でもきっかけというのはなかったかもしれないです。僕みたいなケースって珍しいっていわれましたけど』


『いまは、どうですか?』


『うーん。まあ、楽しいといえば楽しいですよ。不満はないです。ここで認められて、社員になるのがいまの目標ですかね。社会への不満とかはありません。就活も、別に。まあ、もっと他の選択肢があってもいいような気もしますが』

 


…鬱を偽装しようか?


私は思いました。


7ヶ月前に、リビングでたまたま親とテレビを見ていたときに、就活に失敗して引きこもりになった若者のドキュメントを見たことを思い出しました。


専門的な知識でなくとも、あの番組の情報を共有できたことはいまとなってはよかったかも知れない…


私の頭のなかにはドス黒いものが渦巻いていました。