ギャンブル依存症患者が綴るノンフィクション。

自戒の念を込めつつ、15年間に渡る「ギャンブル依存症」の悲惨な経験を赤裸々に綴ります。こんなダメ人間にはならないで下さい。毎日更新しています。

終わらない偽装。

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終わらない偽装。

テレビではじめて、大学の卒業式シーズンを知りました。私のことを気の毒に思ってくれた吉田は無事、就職先が見つかったことを報告してくれました。


私はすずめがさえずる音で目が覚め、窓を開けました。とおく先にある公園から運ばれてきたのか、時折、桜の花びらが宙を舞っています。

 


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「吉川さん、1年間またよろしくお願いします」


私がそうおどけたとき、吉川さんは相変わらずの能面のような顔つきでしたが、口元をすこし緩めて「よろしく」とこたえてくれました。


「とうしたの?」


「ちょっと、まあ、なんというか、勉強になかなかついていけなくて。」


私は吉川さんにはそのように表現しました。あながち間違いではない、と思いながら。


「そうか」と、吉川さんは看板を持ち上げながら、少し間を空けてこたえました。


「まあ俺からすれば、何年がかりでも、大学を卒業できる可能性を残してる時点で、全然問題ないと思うけど」


吉川さんがつぶやくように放ったその一言に、少し救われた気がしました。まだ私も何かしらの可能性を残しているのだ、と。


吉川さんはその半年後、祖父の体調不良をきっかけに、ヘルパーになりたいという目標ができ、いまのバイトを続けて学費を稼ぎながら専門学校に通うと言いました。


吉川さんの昔の話の深い部分はわからずじまいでしたが、吉川さんは過去に向き合い、過去を消化し、過去を認め、新しい目標に向かって歩き出していました。


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大学時代に出会ったひとは、例外なくみんな卒業していきました。大学内で私の留年を知っているひとは吉田に限られているはずですが(つまり周りは私が普通に卒業するものだと思っているはずですが)、卒業式の日、私の携帯は一回も鳴りませんでした。


私は母校の卒業式の日も、パチスロをしていました。相変わらずの生活です。でも、借金がないというだけで気持ちがだいぶ楽になりました。


借金があると、返済日と返済金額に追われ、日々の行動が縛られます。パチスロをするたびにお金がマイナスになり、マイナスを取り戻すためにギャンブルで増やそうという負のループが続いてましたが、いまはどんなにカネが減ってもゼロ以下にはなりません。


「借金がない」というだけで、ひとのランクが一段階あがった気がしました。


私はいままでより、努力をするようになりました。


偽装の努力です。


わざとらしくデスクに置かれた参考書は、1日欠かさず10ページ折り進め、ペンや消しゴムの位置も変え、勉強しているように見せかけました。


親には日々「図書館に行ってくる」と言ってパチスロをしました。


パチスロにいく前後、パチンコ屋にいくために購入した服を公園のトイレで着替え、髪以外の煙草の臭いを残さないようにしました。着替えはビニールのなかに密閉し、近所のマンションの階段下や駐車場の死角となる場所に隠しました。


服は三回に一回くらいのペースで、リサイクルショップで購入しました。上下で千円以内で購入できる、とても安いものです。


そのあと、下着にも煙草臭が残ることに気付き、下着を履かずに直接ボトムを履くようになりました。


図書館にいったことを偽装するため、読みもしない本を定期的に借りました。頻繁に借りているように見せかけるため、借りるときに一気に限度数まで借り、小出しに机のうえにだしたりしました。


「狂ってる」と、誰もが思うでしょう。


私はそこまでしてパチスロをしたいのでしょうか?


したいのです。


私はすべてを失ってまで、私以外の誰もを騙し、利用してまで、パチスロをしたいのです。パチスロをしないと死んでしまいます。


毎年、夏場の炎天下、パチンコ屋の駐車場で、子どもが車のなかに置き去りにされ、死んでしまうという悲しいニュースが流れます。


私は自己分析を繰り返し、自身がそういうことすらしてしまいそうな傾向があることに気づいているため、絶対やることはないです。ただ、そういうことをしてしまう人間の心理はわかります。


「なんでかわいい子供を放置してそんなことをしてしまうんだろう」「放置したら死ぬってそんなの小学生でもわかるだろ」「こんなの人間じゃない。親になる資格がない」、世間はそのように拒絶感を示しますが、私は他人事に思えません。


もう、しつこいくらい繰り返しますが、理屈ではない。理屈ではないのです。もう、脳が完成されてしまっているのです。


悲しいことですが……

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