ギャンブル依存症患者が綴るノンフィクション。

自戒の念を込めつつ、15年間に渡る「ギャンブル依存症」の悲惨な経験を赤裸々に綴ります。こんなダメ人間にはならないで下さい。毎日更新しています。

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引きこもり。

引きこもり。 それから数日、気持ちが沈んでいました。なんのやる気も起きず、廃人のように、自宅で固まっていました。 何故彼女に電話をしようなどという暴挙に出たのか。まさか、本当に彼女が私のことを待ってくれているとでも思ったのでしょうか。自分は…

元彼女との電話。

元彼女との電話。 「ごめん、聞こえる?」 彼女は、あまり声の聞こえない場所に移動しているようでした。私は彼女の声をもっと聴きたくて、感情が高鳴りました。 「いや、なんか、なんとなく、なにしてるのかなって」 「なにしてるって、そっちこそ、いまな…

懐古。

懐古。 バイトして、パチスロして、バイトして、パチスロして、バイトして、パチスロして。 留年後の生活は、いままでとなにも変わりませんでした。負けては「今日でパチスロをやめよう」と誓い、翌日またパチスロし、また負けて…… 私の場合、パチスロ依存が…

終わらない偽装。

終わらない偽装。 テレビではじめて、大学の卒業式シーズンを知りました。私のことを気の毒に思ってくれた吉田は無事、就職先が見つかったことを報告してくれました。 私はすずめがさえずる音で目が覚め、窓を開けました。とおく先にある公園から運ばれてき…

卒業旅行の季節。

卒業旅行の季節。 とても寒い日でした。 真夏のアスファルトにまだら模様を描いた葉はすべて抜け落ち、キャンパスに貼りつく樹々の影はすべて針になってしまいました。 《受信1》『元気? サークルのみんなで3月に卒業旅行にいくことを計画したんだけど、…

留年へのチケット。

留年へのチケット。 その週の日曜日の夕食後、父親と母親を呼びました。 この日を迎えるにあたり、意外にも緊張や恐怖はありませんでした。借金が完済できた時点で、こころの負荷がだいぶ減っていたからでしょう。 仮に、話がこじれて、父親に「お前最近、金…

止まらない空虚感。

止まらない空虚感。 「ええ……いきなりそんなこと言われても……まったく準備してないし」 「ごめん」 母親は財布のなかをくまなく探し、お札を一枚一枚数えていました。足りないと言われたらどうしようとは何故か考えもしませんでした。 「ああ、あったわ。は…

最後の要求。

最後の要求。 結局、ずっと言い出すことができず、話をしたのは翌日の朝でした。 前日は一睡も眠れず……と言いたいところでしたが、こういうときでさえも私はいつもどおりの時間に寝ていました。途中で目が醒めることもありませんでした。 しかし、いつもと違…

私はもう十分嘘をつきとおした。

私はもう十分嘘をつきとおした。 意識が沈殿したまま、最寄駅に着きました。最後にパチスロをしてから3日経っているはずなのに、右のまぶたがピクピク痙攣を起こしています。 のぼせたときのように頭が重たく、息を吸っても胸が膨らむだけで、肺が酸素を取…

ドスのきいた男の声と最終通告。

ドスのきいた男の声と最終通告。 『うまく切り抜けている、さすが俺だ、あと一週間、時間稼ぎをすれば自分の力で完済できる……』 スーツに着替え、看板持ちのバイトをしに新興住宅地の駅へと向かいます。 夜中、電話線に細工をしてきました。母親は夜まで帰っ…

自宅へのコール。

自宅へのコール。 勝った瞬間がないわけではないんです。 最期の勝負。一時的に、手持ちの一万五千円が、二万三千円くらいになったときがありました。でも、そこでやめようとは思いません。こんな重要局面でさえ。 二万三千円までいけたのなら、せめて元本割…

破綻へのカウントダウン。

破綻へのカウントダウン。 『いやいや嘘だろ……』 明細が信じられなくて、見ては一呼吸して、また見ては一呼吸していました。記憶を辿りながら、6回ぐらい見直しました。 こんな使ってない。使ってない。

カードによる借金の限界。

カードによる借金の限界。 留年プランは、結局まだなにも行動を起こせずにいました。 何故か? 単純に、怖かったからです。 本能的に、「それをやってしまったら私という人間は本当に終わる」ということを自覚していたからでしょう。

乖離していく感覚。

乖離していく感覚。 「お振込みが確認できませんでしたが」 「あ、すいません、ちょっと、諸用がありまして。さっきまでどうしてもお振込みできませんでした、すいません、本日これから振込みますので…」 (「返すお金がありません」とはさすがにいえなくと…

なぜギャンブル依存を隠すのか?

なぜギャンブル依存を隠すのか? 結露に覆われたグラスの一点を見つめて話す吉川さんは口だけ笑っていました。割り箸の袋をちぎり、ボール状になるまで駒結びを繰り返しています。 「まあ俺も、なんのために大学行ってたのかよくわからなかったし、大学を辞…

150万の借金と吉川さん。

150万の借金と吉川さん。 「吉川さん、もう一回」 吉川さんの地元駅で私は、久々の格闘ゲームに興じていました。 (ストリートファイター2、ストリートファイター3。主にこのゲームが好きでした) 吉川さんは100円2枚のメダルを交換し、台の上に6枚積…

翌々月、私はブラックリスト入りをします。

翌々月、私はブラックリスト入りをします。 翌々月、私はブラックリスト入りをします。 ** 私が母親に講じた手段は「無言」でした。行為行動の説明を一切省き、相手を不安にさせる。 足繁く就活に行っていた偽装をやめました。常に黙ってどこかにいく。一切…

ヒラメキ

ヒラメキ 「いや、もしかしたら、ああいう情報に一度ふれたからこそ、最近はそこまで俺の就活に介入してこないのかもしれない。もしかしたら、父親にもそういう話をしているのかもしれないな。父は、母の言うことは余程でない限り認めるからな…」 推測でしか…

終わろうとする、大学生というモラトリアム。

終わろうとする、大学生というモラトリアム。 手伝いをする回数が増えました。無償でなにかをすることがなくなりました。 すべてはご機嫌取りと見返りのため。誰も知らない悪行の罪滅ぼしのため。将来的にするであろう要求をとおしやすくするため。 「なにも…

パチンコ中毒の行く末。

パチンコ中毒の行く末。 「みんな働いている、とかですか?」 私の質問を吉川さんは嫌がっていないか、慎重に表情を追いますが、相変わらず顔のパーツ全体が皮膚に張り付いているような、変化に乏しい顔でした。 「んー、そういうわけじゃないけど、1人、そ…

パチンコで大学中退の吉川さん。

パチンコで大学中退の吉川さん。 ただ、一期一会の関係だからこそ、そんなことを聞くのははばかられました。 「中退の理由って? あんたと俺とは無関係なのになんでそんな失礼なことを聞くんだ!」次はもう会わないかもしれないからこそ、いい印象のままでい…

バイト仲間の境遇。

バイト仲間の境遇。 私は今月の支払いに備えて、また日雇いバイトに精を出していました。 何回も現場で同じだったひとがいます。 そのひとは、吉川さん(仮)と言いました。 きれいな二重の目はギョロリと特徴的で、真っ黒な髪はいまどき珍しいスポーツ刈り…

ニュースが示唆するもの。

ニュースが示唆するもの。 テロップに容疑者の名前と年齢が表示されました。26歳無職。私は食洗機の近くに放置された袋入りのクッキーを食べながら画面を見ていました。 「男はおおかた犯行を認めており、金に困ってやった、などと話しているということです」…

間一髪、窮地を脱する。

間一髪、窮地を脱する。 食事を終えた母親は、皿を片付け、水洗いをしようとしていましたが、私はすかさず「あ、いいよ、やるよやるよ」と遮りました。 はやくいけ、はやく洗濯物を取りにいけ… 「じゃあ洗濯物取り込んでくるわね」 私は階段下に張りつき、母…

煩い

煩い しかしこんなところで立ち止まるわけにはいきません。私には成し遂げなければならない構想があり、志半ばでそれを断念することなどできないのです。 「さて、続いてのニュースです。O県I市で、連続して空き巣被害が出ております」 女性アナウンサーがニ…

蝕み

蝕み 「松永さんという方から電話だよ」 夕食どきに、電話が掛かってきました。 母親は私との繋がりが想像できない声だったのか、顔にハテナマークを浮かべていました。嫌な予感がしました。 「はい、森田ですが」 「森田様、◯◯の松永と申します」 無機質な…

破産は目前、歪む人生。

破産は目前、歪む人生。 深夜2:00。 両親が深い睡眠にはいるこの時間帯は、お金を抜くには最適でした。 4回目。もう手慣れたものです。財布とその周りのものの位置を正確に記憶し、皮脂がつかないよう直前に石鹸で洗った手で、慎重に、財布の小銭入れを空け…

友人の不幸を望む自分がいる。

友人の不幸を望む自分がいる。 「じゃあまた!」 佐伯を見送る私は、感情を抑え、佐伯が見えなくなるまで曇った表情を見せませんでした。 不幸になればいいのに。そう思いました。 不幸になればいいのに。 不動産とOA機器。どちらが不幸になるだろう。不動産…

楽しいひと時、宴会の終わり。

楽しいひと時、宴会の終わり。 時計は23時を過ぎていました。 過去の話で盛り上がり、今現在の話でも盛り上がりました。 佐伯は、「時期はまだ早いけど、」と断ったうえで、卒業旅行はサークルの企画で毎年海外に行くんだ、みんなでタイに行くかもしれない、…

ヨダレの様に流れ出ていく嘘八百。

ヨダレの様に流れ出ていく嘘八百。 「ああ、いまバイトしてる広告代理店で働くことになるかも」 私は持っていたグラスを置き、答えました。グラスにはまだ一杯目のビールが三分の一残っていました。 「おお、そうなんだ!すごいね!」 佐伯は身体を仰け反る…