ギャンブルと借金、「一万円」のライン
「一万円」というひとつの線引き
最初の3カ月間、奇跡的に借金(キャッシング)は一万円で収まっていました。
借金という一線を越えてしまった次のラインは、「一万円」という金額でした。
「一万円ならすぐ返せるし、借金のうちにはいらないんじゃない?」
借金の罪悪感を、金額を理由に打ち消すわけです。
毎月1日に返済。
滞りなく、返済。
でも、返済して終わりではありませんでした。「一万円なら大丈夫」と、金欠になればためらいもなく一万円を引き出すようになっていました。
金額に、耐性がついてしまいました。
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この時期、居酒屋のバイトを辞めることを決意しました。
理由は3つあります。
一つめは、店側の都合であまりシフトにはいれなくなったこと。(昔は客のいない平日にもバイトを多く入れましたが、辞める直前にもなるとは団体客の予約日か土日くらいしか入れなくなりました)
二つめは、仲の良かった先輩がみんな就職で辞めていってしまったこと。
三つめは、給与支払日が遅かったこと。
時給は決して悪くはなかったんですが…無料でまかない飯もつき、休日労働、深夜労働割増も出るし、地元なので交通費もかかりませんでしたし。
しかし、そういう待遇面よりも、目先のカネのほうが大事になったのです。
この「目先の収入しかない状態」が、このあと私の首を絞めていくことになるのですが…
居酒屋のアルバイトでは、夜シフト(17時~22時、ラストは22~2時)が終わったあと、コンビニで酒を買って公園で夜中まで喋ったり、24時間営業のレストランにみんなで集まったり、先輩の家に行くことをよくしていました。
いろいろな先輩のなかでも、片岡さん(仮)には特にお世話になりました。
片岡さんは、建築を学んでいる大学4年生で、背が高く、スポーツ万能、努力家、面倒見がよくて、人望が厚い。まったく欠点が見つからないような人でした。
私はよく、片岡さんの家に遊びに行き、夜通し(何故か)将棋をやったりボードゲームをやったり、彼女のことや将来の夢について語ったりしました。
片岡さんの就職が決まったときのことです。
いつものように、バイト終わりに自転車で片岡さんの家に寄りました。
片岡さんの部屋は、六畳もない、無駄がなく簡素な部屋でしたが、並べられた家具、雑貨はセンスが光り、建築を学んでいる人が住む部屋なのだと違和感なく受け入れることのできるつくりでした。
「斎藤君は将来をやりたいか決めた?」
出されたお茶を飲みながら、世間話の延長で片岡さんは聞いてきました。
「…まだわからない?」
「ははは…」(将来なにをしたいという次元じゃなく、自分はいまパチスロ中毒で…)
「そういえば、昔、新聞社にいきたいっていってたよね、いまは目指してないの?」
「はは…」(よく覚えてるなぁ…それ、俺が大学1年のときに、夢がない自分が嫌で適当に言ったやつだ…)
将来。夢。やりたいこと。そういうフレーズが私の胸を突き刺します。
「あ、でも、新聞社って、調べたんですけど、選考受けるのに学科試験みたいなのがあるらしくて…周りは東大生とかばっかで、多分無理ですね…はは…」
頬のあたりがヒクヒクし、早く別の話題にしたいと私は考えます。片岡さんは、卒業研究に使う広場の模型をいじくりながら、こう言いました。
「いやー、わからないよ、まだまだ時間があるからねぇ。チャレンジしてみてもいいと思うけどなあ」
チャレンジ…。確かに就職活動まではまだ半年もあって、そのためになにかに打ち込むことは必要なのかもしれません。それこそパチスロなんてやめて、なにか他のことを…。
「新聞社とか大変そうだなあ、休みとかなかなか取れなそうで。でも絶対やりがいありそうだよね」
片岡さんは明るく、希望に満ちた目で私に話し掛けますが、私にはその言葉が全然頭に入ってきません。
片岡さんは大手企業に入りました。
片岡さんは、しっかりと大学に行き、自分の金は自分で稼ぎ、時間があれば友達とフットサルをし、建築の見識を深めるために海外に行ったり、本をたくさん読み、彼女を大切にし…。
健康的で、精力的で、自立心がある、まさに私が大学に入る前に夢想していた「理想の大学生」そのものでした。
かたや、自分はどうでしょう。
講義に出たふりをしてパチスロをし、親を騙して金をくすね、思い出やモノは増えるどころか減る一方で、友達とも疎遠になり、夜間や大学をサボってまでバイトしたり、しまいには借金までしてる。
どう考えても、異常です。
この2年間、私は何をしていたのでしょう。
急に現実に戻され、首筋からねっとりした汗が滲み出てきました。
「あ、これ、見せてもらっていいですか?」
どう繕っても顔色が暗くなりそうだったので、自ら話を逸らしました。
「お、これか。斎藤君、サクラダファミリアって知ってる? 俺、これが好きでさあ、いいよいいよ」
「ああ、これまだ完成していないやつですよね、スペインにある、へえ、見せてもらっていいですか」
私はいつものように「相手に興味がある」フリをし、ずっと相手の話を聞き続け、就職の話題を逸らしたのでした。
内容はひとつも頭にはいってきませんでした。「就職。就職。就職。就職。パチスロやめなきゃ。パチスロやめなきゃ…」このフレーズがグルグル頭をまわります。
その日以降、片岡さんに会う頻度は激減しました。他の先輩や仲間がいる状況で、就職の話を振られたらたまったもんじゃありません。
「あ、もう24時ですね。そろそろ帰ります…」
あの日の帰り道、自転車を漕ぎながら夜風に当たっていると、だんだん頭が冷えてきました。
動揺から覚め、その瞬間、就職活動にたまたま成功しただけなのに、相手に対して余裕面でアドバイスまでしてくる片岡さんに殺意が湧いてきました。
「俺は片岡さんよりもいい大学に通っている。よく考えたら俺はそんな臆病になる必要なんてないじゃないか。なんで俺がアドバイスを受けなきゃいけないんだ…」
次の日はむしゃくしゃして、
一日中パチスロを打ちました。
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