依存性の形成03
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「大学はどうだ?」
大学に進学してから約一ヶ月。
出勤前の父親がネクタイを締めながらそのように聞いたとき、私は笑顔で「楽しい」と応えました。
「都内通学なんていいなぁ、羨ましいよ」
私にそう言ったとき、カバンを持った父親の口元は緩んでました。
(まあ、ここで「うん、なんか新歓コンパではあまり相手にされなくて俺はとても惨めだったよ父さん」なんて言う息子はいないでしょうけど)
自分の父親からの評価は、これまでの「冴えない息子」から「誇れる息子」になったわけですから、私だってその期待に応えたかった。
…結局、サークルは、英語のクラスの友達に誘われた、「地味な」オールラウンド系サークルに落ち着きました。
みんな自分ではなく友達のことを第一に考えてくれる人ばかりで、居心地はとてもよかった。飲み、旅行、バカな企画、いろいろとやりました。
大学生活はそれとして、
私は飲食店(居酒屋)でアルバイトをすることにしました。
高校卒業後の春休み、長く続けられそうなアルバイトを探すため、求人誌を漁り、地元を歩いて求人情報を集めたりしました。
最初に目をつけたのは駅前の喫茶店。
いつ見ても客が常連の老人数人しかいなくて、週2回からOKで仕事も暇そう、時給もそこそこという条件でしたが…
面接で店長に「毎日入ってもらわなきゃダメなんだよね~」と言われ受からず。
(後日、女性しか募集してなかったことを知る)
求人誌で見たドラッグストアは駅から離れていたので却下。レストランや生鮮食品系は高校時代に痛い目を見たので、これも却下。
消去法で、駅前の居酒屋で働くことにしました。
店のドアに貼り出していたバイト募集のチラシを見て、即応募。
チェーン系ではなく、地場に根差した居酒屋。
時給はそこそこ良く、週2~5回と融通が効き、勤務時間も17時~22時まで入れるのが魅力でした。
「日本人の面接官による」面接はサクッと終わり、サクッと受かりましたが、
入って「聞いてないよ!」ということが。
なんと、店員の半分が外国人。
キッチンは住み込みの東南アジア系がメインで、
片足に障害が残ってる元当たり屋、
あとは自称「昔は地元で有名なヤンキー」の中年男など、かなり個性豊かな面々でした…
言葉が通じないので、注文内容がうまく伝わらないのがストレス!(いま思えば、よくホールとのコミュニケーションが成り立ってたなあと思いますね…)
日本語が達者な通訳役の外国人が風邪で休みのときなんかは酷かった…。
「注文入ります!注文ナンバー12、エリンギのバター焼きと…」
「エゥィン? バダ?」
「ノー、エリンギ!」
「?? エゥィン? ワカンネヨ!(怒)」
「キノコ!キノコ!ってかこれ!」(メニュー表を見せながら)
…疲れる。
一方、ホールは大学生がメイン。
4年間に渡る引き篭もり生活の果てにリハビリとしてバイトを始めた先輩、
建築士を目指すエリートコースまっしぐらの先輩、
静岡から上京してきた超かわいい同期の子。
途中で入れ替わりはありましたが、
ホールは自分含めて全員で8人。
多国籍のキッチン部隊とほぼ毎日ぶつかっていたからか、
ホール組はチームワークがよくて、バイトが終わったあとみんなで飲みに行ったり、誰かの家で遊んだり、ビリヤードをしたり。
家族みたいに仲が良かった。
「中学から5年間付き合ってた彼氏と別れたんだよね…」
「スチュワーデスに就職決まった!」
「いま卒業研究でさ、『子ども100人が遊べる』をテーマにした公園を設計してるんだ」
「引き篭もりからここで俺は復活できた!みんなより6年スタートが遅れたけど、目標だった美容の専門学校に行くよ」
みんな熱苦しいくらい、前を向いてました。
世代が少しづつ離れてたからこそ、それぞれの世代ならではの経験、悩み、思いを共有することができました。
これまで「年上」との関係をあまり持ったことがなかった自分にとって「大人とはこういうもの」という良いモデルもできました。
こんな、一風変わっていて、でもとても魅力に溢れた職場でした。
稼ぎでいえば、
1ヶ月だいたい5万円前後。
夏休み期間でも7万円くらい。
給料は月末締の、翌20日払いでした。
(ランチ営業はしていなかったので、土日は昼に入れるわけではなかった)
当然というか、5万円もあれば、毎月給料が足りなくなることなんてありませんでした。
それに…私は実家暮らしにも関わらず、バイト代とは別に月々3万円の小遣いも貰っていました。
(甘々ですね)
月の収入は8万円くらいあったことになります。
これって、下手したら自活してる社会人よりも自由になる金が多いかもしれないですね。
それなのに…
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