ギャンブル依存症患者が綴るノンフィクション。

自戒の念を込めつつ、15年間に渡る「ギャンブル依存症」の悲惨な経験を赤裸々に綴ります。こんなダメ人間にはならないで下さい。毎日更新しています。

ついに父親にも頼る。

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ついに父親にも頼る。

 

猶予は実質1日。


手持ちのカネを数えます。


1万、2万…


「21,860円」


少なくともあと「三万円」足りません。小遣いは3日前に貰ったばかりです。


「一か八か、パチスロで増やそうか?」


そう思いましたが、地元のパチンコ屋は新装開店前の閉店日なので行けません。
(やってたら絶対行ってました)


当時はネットもあまり活用できていなかったので、頼るべきは無能な己の頭しかありません。


「どうしよう、どうしよう…」


朝、日雇い派遣の電話を切ったことを後悔しました。仕事紹介の電話だったのかはわかりませんが、パチスロではなくバイトをしていれば…。


ここは「親」です。
やはり親を頼るしかありません。


「母さんごめん、ちょっとさ、革靴をもう一足買おうと思ってて、今月の小遣いは電車代とか昼代に取っておきたいし、あと2万円くれない?」


脳内でこの理屈が不自然じゃないかをチェックします。


いまの革靴はバイトで酷使してるので、靴底が磨り減ってきて、いい感じにみすぼらしくなっています。


母親は頻繁に靴を磨いてくれていましたので、間違いなく母もそれを見ているはずです。


新しい革靴は、借金返済後、地元のスーパーで2,000円~3,000円ぐらいの安モノを買えばいい…


「よし、いける!」
脳内で2万円を確保できました。


あと1万円。


兄は、出張で3日間不在と聞いてます。


残るは、父親…。


私は昔から父親が苦手でした。単純に、怒ると怖いからというのもありましたし、家族にまで「サラリーマン」の文化を持ち込んでくることも嫌でした。


幼い頃から、何か間違ったことや怒られることをすれば「そういうことをすると会社では怒られるんだぞ!」


ビールを上手く注げば「お、いいな、会社の飲み会で褒められるぞ!」


私は幼いながらも「え? ここは職場じゃなくて家だよね?」と思ったものです。


家と職場。意識が対極的なところにあるこの男から、果たしてカネが取れるのか…


**

父親はまだ帰ってきていません。


毎日夜遅くまで飲んでいることが多く、帰りは恐らく夜中の一時ぐらい。


待っている間、動悸がしました。汗が出ました。パチスロでかく汗とはまた別の、嫌な汗でした。


脳内で何度もシミュレートをします。


理由は、飲み代にしよう。「就活でちょっと金がなくてさ、友達と飲みに行く金も厳しくてさ、小遣いだけじゃ足りなくて…」ちょっと媚びたような笑顔で、明るく言えばいい…。


父親とは普段からあまり会話をしませんでした。まして、頼みごとなんて殆どしたことがありません。だからこそ、どのような距離感で話せばいいのか、どのような表情で話せばいいのか、わかりませんでした。


今日話さなければならないのに、遠くで、コツコツと、コンクリートが革靴に力強く蹴られる音がするたびに、父親でありませんようにと私は怯えていました。

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