まともに働いて親孝行をしたい、と考える。
まともに働いて親孝行をしたい、と考える。
話は戻り、本題に。
「作戦」に出る前に、一度真剣に就職活動をしてみようと思いました。就職できてしまえば、それに越したことはないわけです。
しかし何故、どうしようもないクズである私が、そのような自殺行為に出たのか。
それは、親をこれ以上騙したくない、まともに働いて親孝行したい、という人として根源的な感情からでした…
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リアルでは骨の髄まで腐りきっていても、企業が持つデータベース上では、私はあくまで「優良大学生」。
自宅には連日、企業からのラブコール、ダイレクトメールが大量に届きました。
ただ、当時、この時期の就活は、もうかなりの後手。
大船団で大網を広げて学生を待ち構えていた大手企業は既に漁を終え、残ったところは知名度のない中小企業がメインでした。
「まあ、中小企業なら引っかかるんじゃないか…もし内定取れたら、今度こそパチスロから足を洗って、しっかり卒業できるように勉強も頑張らなきゃ!」
申し込んだのは、大手商社のひ孫会社の食品卸でした。
申し込みの動機は「ダイレクトメールが届いたってことは、きっと向こうも俺個人に興味あるんだよな♪」という思い込みから。
「なんなら、一次面接も免除されるんじゃないか?」と、完全に脳に花が咲いている状態でした。
あとは、扱うものが食品で身近なので、売るもののイメージがわきやすい、というのもありました。
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「11:00までにご来社ください」
前日も閉店時間近くまでパチスロをしていましたが、当日は緊張のため午前5時に目が覚め、何年振りかに朝食を食べました。
「普通の学生は、こんな感じなんだな…よし、今日は頑張らないと!」
雨風が吹くなかで看板持ちをし、少しヨレた濃紺色のリクルートスーツと、大型スーパーのワゴンセールで買った革靴とビジネスバッグ。
髪は、不揃いな襟足がわからないよう、ワックスで少しだけ散らしました。
その会社は、「説明会終了後、選考に進む意志があればすぐに面接します」とのことで、履歴書を持参していきました。
履歴書は、どういうことを書いていいのかわかりませんでしたし、わかろうともしなかったので、特技には「サッカー」、趣味は「音楽鑑賞」と書きました。
志望動機は、当日五分くらいで考えました。「人間が生きていくためになくてはならない食料を扱う御社で、食料をとおして人々の生活に貢献していきたい」。
会社については、調べていません。ダイレクトメールの会社紹介を読んだだけでした。
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「こんにちは。本日は説明会にお越しくださり、ありがとうございます」
(続く…)