ギャンブル依存症患者が綴るノンフィクション。

自戒の念を込めつつ、15年間に渡る「ギャンブル依存症」の悲惨な経験を赤裸々に綴ります。こんなダメ人間にはならないで下さい。毎日更新しています。

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ギャンブル依存症のはじまり03

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(前回のつづき…)

それからというもの、バイトの給料日前など、財布にお金が残っているとき、暇なとき、ちょくちょくパチンコを打ちました。


それでも、ペースは1ヶ月に2~3回。
ビギナーズラックを掴んで以降、大勝ち(当時の自分の金銭感覚で)することはありませんでした。
当たっても一万円以内。

まあ、そもそもそのときはパチンコ屋に長期滞在はせず、初当たりを掴んだら一撃離脱で、決して粘りませんでしたからね。
でも、だからといって、負けてはいませんでした。少額ながらも勝ち続けていたんです。

『あれ? ギャンブルって負けるイメージが強かったけど、全然負けなくね? まさか俺ってパチンコの才能があるのかなぁ。』

当時は本気でそんなことを思ってました。(パチンコの才能って何だって話ですが…)
バイトの副収入。
お小遣い稼ぎ感覚。

釘なんて読めなくても、自分は適当な台に座って、適当に打ってるだけで勝てる。
煙草臭く、うるさい空間は相変わらず慣れませんでしたが、遊び代や飲み代を稼げるのでパチンコを止めようとは思いませんでした。

ある日、一万円負けました。
(トータルでは買ってましたが)

でも、負けてもこんなことを考えてました。
『一番最初に儲けた三万五千円は遊びで掴んだようなものだし、取り敢えずそのお金がゼロになるまではやろうかな。』
(…思い返せば、パチンコの才能があるってより、自分にはパチンコ依存症の才能があったんですな…)

 


それからというもの、パチンコを続けるたびに、五千円、七千円、と徐々にお金を失っていきます。

でも、止めることはありませんでした。

あの大勝をもう一度味わうまでやめられない!
というモチベーションがありました。

 

負け額が、最初の三万五千円を上回ろうとした時期でした。
何を血迷ったのか、バイトの給料日にパチンコをしてしまいました。
給料日前は彼女と旅行に行ったあとだったので、財布のなかはほとんどお金が残っていませんでした。

当時私がバイトしていた飲食店は、振込ではなく、手渡しで給料を渡されてたので、三万円強が入った茶封筒を財布がわりにパチンコに行ったことになります。(早くも典型的なダメ人間の兆候)
でも、いままで相性がよかった『海物語』は、まったく当たらず、600回転強もハマってしまいました。

でも、不思議と、当たる自信がありました。

 

何故か?
自分にはパチンコの才能があると思っていたからです。
「絶対に勝てる」
そう思ってました。

パチンコを初めて以来、
自分は(パチンコを打つ)周りの人間とは違う、と思ってました。
自分の打つ台の列には、みすぼらしい格好をした夫婦、皺だらけののワイシャツを着た冴えない中年男性、安っぽい染め方をした金髪の若者がいました。

みんな、間抜けな顔で台に夢中になってます。
ときにはイラついて台にパンチしたり。
『学もなく、地位もなく、金もなく、惨めで、みっともない大人だなあ』そう思ってました。

『自分はこいつらとは違う。周りが羨む大学に受かり、将来金持ちになって成功する身だからな。友達も多く、彼女もいて、まさに理想的な大学生活。そのうえ、パチンコなんてちょっと不良がやるようなことだって覚えた。しかもこいつらみたいに負けてない。もう最強じゃん』と。

そんな風に考えながら夢中になっていたら、二万四千円がなくなってました。
『あれ、おかしいな…。稼いだお金をすべて使ってしまいそうだ…まさかトータルでも負けた…?いや、まあでも、今月はまだ小遣いがあるからもう少しだけ粘るか…』

一万円残っていたので、『海物語』を止め、気分転換も兼ねて『ワンワンパラダイス』へと移動しました。
サンヨーの『ワンワンパラダイス』は『海物語』の亜種というか、スペックはや演出はほとんど同じで単に図柄が魚から犬に変わっただけでしたが、これも全然当たりませんでした。

九千、八千、四千、三千、二千…
それまでは少額投資が殆どだったので、一日の投資が三万円を超えるのはさすがに怖くなってきました。

『本当に三万円も使ったのか?』茶封筒の中身をしつこいくらい確認します。
それまで、あれほどあった自信が突如薄れていき、顔が青ざめてきました。

『あれ…ちょっとヤバい…なんでこんな金使ってるの? ほら、パチンコなんてやっぱり聞いていたとおりで、負けるようになってるんだよ絶対…あー、買ってるうちに止めておけばよかった!もうこれで最後にしよ…』

テロテロテロテロ…♪
テロテロテロテロ…♪

最後の千円分の玉が台に補給されます。
『あーもう!畜生!神様お願いします!当たれ!当たってください!』

テロテロテロテロ…♪
『リーチ!』
(大当たり期待度の高い群予告が流れる)

『お!』
ドゥルルルルドゥルルルル…
(女の子が降ってくる)

「きた!!」
デュワワワワ…

「頼む!頼む!当たれ!」

デュワワワワ
…ピタ

 

確変大当たり!
「おおおおおおおおおお!」

これまでに起きた人生のすべての快楽を凝縮したような、強烈な経験でした。
パチンコパチスロで記憶に残っていることは少ないですが、「思い出の歴代一位を選べ」と言われたら、私は迷わずこの日の出来事を挙げます。

本当、ありとあらゆる快楽よりも気持ちよかった。興奮、高揚、達成、感動、逆転、刺激、優越…一つ一つはとても原始的な感情でも、すべてがすべて限界突破するほどに増幅されていて、それらが濁流になり一気に脳に溢れ出てくるようでした。

もう、何もかもを捨ててずっとこの感覚に浸っていたいと思わせるような…
終わってみれば、九連荘!
(時短引き戻し込みですが、確変確率五十%と考えれば、神憑りな確率です)

 

大当たりが続くたびに、一段階一段階、限界のさらなる限界を超えた快楽が脳を満たしました。
連荘中、自分は日本社会の階級のトップに立った錯覚を味わってました。
羨ましそうに自分の台を見つめるおばさん。通りがかるときに羨望の眼差しでこちらをじっと見つめるおじさん。(実際に羨ましがってたのかはわかりませんが、自分にはそのように見えました)

『ほらやっぱりそうだ!俺はこいつらとは違うんだよ!』
それまで漠然と抱いていた自信が、確信に変わった瞬間でもありました。
『やっぱり俺はパチンコの才能があるんだ!こんな奇跡、普通に考えて起こるはずがない!いやー笑いがとまらん。みんな不幸になれ、俺のところにだけ金が集まってこい!』

誇張や冗談ではなく、本当にそう思ってました。
店から少し離れた駐車場脇にある景品交換所で七万円近くの現金を手にして、自分は将来パチプロになろうと妄想したりするのでした。

不労所得。努力ではなく才能。金持ち。
プロの賭博者の姿は、自分が憧れていた将来像と完全に一致していました。
(もちろん、プロの賭博者がいたとして、それは恐らく身分が保証されてない以上、サラリーマンより地味な努力が要求される高度な職業だと思いますけど)

帰り道、興奮の冷めないまま、何度も財布に入った分厚い現金の厚みを確かめてました。
『何を買おうかな…』
期待に胸を膨らませてました。

このドラマチックな一日は、私がギャンブル依存症という破滅への入口に足を踏み入れた日でもありました。


そして残念ながら、
私の脳の構造は、
この日を境に変わってしまったのです…

 

 

※以下に続きます…

 

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